首都圏のマンションを中心に、備え付けの設備として導入されているディスポーザー。
使える設備ランキングでは常に上位にランクイン。ユーザーの満足度が高く人気の設備の一つとなっています。
もし備え付けのディスポーザーを交換する場合、どの製品に交換しても良いのでしょうか?
答えは No です!※要綱では
今回は交換に対応した製品(製品認証品)と、それぞれの製品の特徴について詳しく説明していきます。
※製品の比較のみ知りたい方は、下記目次より 4-2.機能・性能の比較 をクリックしてください。
はじめに
1996年にディスポーザー排水処理システムが構築されて以降、首都圏を中心にディスポーザー付マンションが普及し始めました。1996年以降の出荷台数は累計80万台以上。現在は交換需要を含めると年間6万台程度が出荷されています。
当初はディスポーザー交換の際は、既設と同一製品への交換というルールがありましたが、既に倒産や事業撤退したメーカーもあります。交換品を既設と同一製品に限定することは事実上不可能となりました。
2018年4月より東京都では要綱が改正され、ディスポーザー交換の際は、(公社)日本下水道協会の製品認証品であれば、届出不要でユーザーが自由に製品を選ぶことができるようになりました。(ディスポーザーの交換自由化)
要綱改正前:ディスポーザー交換の際は、既設と同一製品、または既設と同一メーカーの後継製品に限る。(交換製品が限定される)
要綱改正後:ディスポーザー交換の際は、(公社)日本下水道協会の製品認証品であれば製品は問わない。(交換製品が限定されない)
※東京都以外についてはお住まいの下水道局にご確認ください。
ディスポーザーの交換自由化に伴い製品認証を取得している6メーカーの製品について徹底解説していきたいと思います。交換をご検討されている方は是非とも参考にしてみてください。
製品認証品とは?
そもそも製品認証品とは何なのか・・??
現在の日本では、ほとんどの地域でディスポーザーの単体使用(下水道直接放流)は認められていません。ディスポーザー付マンションには、ディスポーザー排水処理システムとして導入されています。
ディスポーザー排水処理システムのイメージ図
ディスポーザー + 専用排水管 + 処理槽 = ディスポーザー排水処理システム
ディスポーザーで破砕された生ごみ(キッチン排水)は専用排水管で処理槽へ送られ、処理槽で微生物分解(バイオ処理)されて、浄化された水が、公共下水に流れる仕組みとなっています。
ディスポーザーを他の製品に交換する場合は、ディスポーザー交換後も処理槽を含めたシステムとして性能が維持(担保)されるかが重要となってきます。
(公社)日本下水道協会のディスポーザーの規格には、①規格適合評価、②製品認証の2つの規格があります。(実にややこしい!)
超ざっくりと説明するなら、
①規格適合評価は性能に関する規格となり、大前提として破砕粒子などの性能試験に合格しないと取得することができません。
②製品認証は品質に関する規格となり、適切な品質管理の元、製造されているかの規格となります。大前提として①規格適合評価を取得していないと取得することができません。
すなわち②の製品認証を取得した製品(製品認証品)は、性能、品質において、一定の水準に合格した製品となります。
ディスポーザー交換の際は、「ディスポーザー」と「処理槽」を切り離して考え、製品認証を取得した「ディスポーザー」と、製品認証を取得した「処理槽」の組み合わせなら、システムとしての性能も担保される。という考えとなります。従って、交換の際の製品は製品認証品である必要があるのです。
製品認証を取得しているのは6メーカー
2020年の時点で、(公社)日本下水道協会の規格適合評価、製品認証を取得しているのは国内6メーカーとなっています。各メーカーについて簡単に説明していきます。※YouTube動画もご参考に。
テラル
ポンプや送風機で有名なメーカー。2019年度のディスポーザー出荷台数は国内No.1。主力機種のDSP-100Hと上位機種のDSP-250HDは、本体(破砕部)をフロム工業が設計し、フランジ周りはテラルが設計。製造はフロム工業が担当し、テラル製品として出荷されている。2020年には、DSP-100Hの後継機種としてDSP-75T(テラル製造)を発売。また、ディスポーザー事業から撤退するパナソニックやリクシルのアフターメンテナンスも、テラルが引き継ぐ形となっている。
運転状況
リクシル
住宅機器設備の大手メーカー。本体(破砕部)は海外のアナハイム社から供給されている。主力機種としてランドミルDPRと上位機種のminipo(ミニポ)の2機種を展開。minipoはデザイン性に優れ、投入口のランプの色で運転状況を知らせる機能を搭載。2020年には、minipoの後継機種としてLPO(エルポ)を発売。
LPOの本体(破砕部)はフロム工業から供給されているが、2023年にディスポーザー事業からの撤退を表明。
運転状況(ランドミルDPR)
運転状況(minipo:投入口のランプにも注目)
安永エアポンプ
自動車メーカー向けのエンジン基幹部品も製造するメーカー。低騒音・低振動が特徴で、すでに事業撤退したTOTO社製品の交換機種としても推奨されている。標準機種のYD200BWPと、スリム機種のYD130BWPを展開し、2024年に新製品のYD131を発売。累計出荷台数は17万台以上を誇る。
運転状況
パナソニック
住宅機器設備や家電を手がける大手メーカー。破砕方式にはチェーンミルを採用している。一般的なハンマーミルと比べると破砕性能は劣るが、噛み込みが起こりにくいのが特徴。現行機種はKD-133で、2030年をもってディスポーザー事業からの撤退を表明している。処理槽メーカーのニッコーがKD-133を引き継ぎ、NKD-133として発売。
マックス
文具や浴室乾燥機でも知られるメーカー。破砕方式にはブレードミルを採用している。一般的なハンマーミルと比べると破砕性能は劣るが、破砕部を丸ごと取り外せる唯一の製品。隅々まで清掃したい人には適しているが、手入れを面倒に感じる人には負担になることもある。最新機種はGD-B182だが、新築物件専用機種となっている。(理由は後述)
使い方・お手入れ方法(破砕部丸洗い構造)
野菜くずを処理(GD-B182)
バナナの皮を処理(GD-B181)
スイカの皮を処理(GD-B181)
フロム工業
ディスポーザーがアメリカから輸入・販売され始めた1960年頃からの技術を受け継ぐ、日本唯一のディスポーザー専業メーカー。業務用・船舶用ともに国内No.1のシェアを誇る。破砕部の構造、自動洗浄機能、知能プログラム運転など、多くの特許を保有。高い技術力が評価され、OEMメーカー(積水化学、TOTO補修用、テラル)として累計20万台以上を製造。
2012年よりフロム工業のオリジナル製品を販売開始。高い破砕性能を備え、生ごみの粉砕完了を検知して自動停止する機能や、ジェット洗浄機能など、他にはない高機能・高性能ディスポーザーを提供している。主力製品は、大容量モデルYS-8100とコンパクトモデルYS-7000L。枝豆の莢や玉ねぎの薄皮など、繊維質の生ごみも投入OKとしている唯一のメーカーである。
枝豆の莢を処理・自動洗浄機能
驚きの破砕力!鳥骨58本を一括処理!
スイカの皮など多量の生ごみを処理
枝豆の莢、配管搬送試験(フロム工業製は詰まり知らず?)
製品比較
フタスイッチ、破砕部の比較
フタスイッチの形状や、破砕方式はメーカーによって様々。それぞれの特徴を説明していきます。
【テラル】DSP-100H
フタスイッチがOFFの際は投入口との隙間が大きく、ONにすると隙間が閉じる構造になっており、運転中の音漏れを防ぐ工夫がされている。破砕方式にはハンマーミルを採用。ハンマーと固定刃はどちらも鋳造製で、固定刃の刃溝は60ヶ所に配置されている。※破砕部の構造はフロム工業の設計。
【テラル】DSP-75T


DSP-100Hの後継機種であるDSP-75Tは、フタスイッチに穴を設けることで排水性を向上させている。ハンマーは従来と同様に鋳造製だが、固定刃はコスト削減のため、鋳造からステンレス板へと変更された。
【リクシル】ランドミルDPR
フタスイッチは薄型形状。破砕方式にはハンマーミルを採用しており、ハンマーと固定刃はコスト重視でステンレス板製のため、軽量で形状にも制限がある。同じハンマーミルでも、鋳造製のハンマーや固定刃と比較すると、破砕性能は劣る。※本体(破砕部)は海外のアナハイム社から供給されている。
【安永エアポンプ】YD200BWP
フタスイッチがOFFの際には投入口との隙間が大きく、ONにすると隙間が閉じる構造になっており、運転中の音漏れを防ぐ工夫がされている。破砕方式にはハンマーミルを採用。ハンマーと固定刃はどちらも鋳造製で、固定刃の刃溝は60ヶ所に配置されている。
【安永エアポンプ】YD131


YD200の後継機種であるYD131は、フタスイッチに穴を設けて改良されている。フタが「SET」の位置ではフタを浮かせることで排水性を重視し、「ON」の位置では排水されにくい構造になっており、運転中の音漏れを防ぐ工夫がされている。ハンマーは鋳造製で従来通りだが、固定刃はコスト削減のため、鋳造からステンレス板に変更されている。
【パナソニック】KD-133
フタスイッチがOFFの際には投入口との隙間が大きく、ONにすると隙間が閉じる構造になっており、運転中の音漏れを防ぐ工夫がされている。破砕方式にはチェーンミルを採用しており、ハンマーミルと比較すると破砕性能は劣るが、噛みこみなどのトラブルが起こりにくくなるというメリットがある。
【マックス】GD-B181



14.5cmの大きめの投入口を採用(他メーカーは約10cmが主流)。そのため、フタスイッチも他メーカーに比べて大きめのサイズとなる。破砕方式にはブレードミルを採用しており、ハンマーミルと比較すると破砕性能は劣るが、破砕部を丸ごと取り外すことができるため、隅々までお手入れができるというメリットがある。しかし、構造上お手入れを怠ると清潔に保つことができないというデメリットもある。破砕部を取り外せるのはこの製品だけの特徴であり、破砕部を取り外した状態では、本体の排出口に直接アクセスできるため、異物や破砕前の生ごみが直接排出口に入らないよう注意が必要である。
【マックス】GD-B182
GD-B181の後継機種であるGD-B182は、破砕部の構造がシンプルになり、お手入れがしやすくなっている。また、金属部分が少ないため、軽量化も実現されているが、これに伴いGD-B181と比べると破砕性能が低下。その結果、GD-B182は交換機種としては推奨されず、新築物件向けの専用機種となっている。
【フロム工業】
排水性能に優れたフタスイッチ。中央凹部の側面に大きな開口部があり、フタをセットした状態でも米粒程度の小さな生ごみが粉砕室内に流れ込むため、食器洗い時の運転との相性が良く、使い勝手を重視した設計。フタの開口が大きいことのデメリットとして、運転開始時の騒音が他社製品より少し大きめ(粉砕室内の音がフタの開口から外部に漏れるため)。破砕方式にはハンマーミルを採用し、ハンマーおよび固定刃はともに鋳造。固定刃の刃溝は70ヶ所でスキュー(斜め)形状、ハンマーは遠心力を高める形状に工夫されており、これにより高い破砕性能を実現。枝豆の莢や玉ねぎの薄皮など、繊維質の処理も可能となっている。
機能・性能の比較
各メーカーの代表的な製品の機能、性能についての比較です。投入可能物については各社の取扱説明書を参考にしています。

さいごに
ディスポーザーは製品によって機能、性能に大きな差があります。その他にも詰まりの発生率が高い製品や、スプーンを誤って投入した状態で運転した場合、ターンテーブルとフタの下でつっかえ棒のようになりフタが回らなくなり分解(有償修理)が必要となる製品、本体接続部のゴムジョイントが破れやすい製品もあります。
今お使いの製品に特に不満を感じていないなら交換の際も、使い慣れた既設製品(または後継製品)を選ぶのが無難な選択かもしれません。
もし今お使いの製品に少しでも不満があるなら、他の製品に交換することで不満が解消され、ディスポーザーがもっと便利なものに感じることができるかもしれません。
この先10年以上は使う製品だからこそ、交換の際の製品選びは是非とも慎重に選定していただくことをおすすめします!
また、近年ではディスポーザーの単体使用(下水道への直接放流)を許可する自治体が増えてきています。許可された自治体でも、製品認証品(または規格適合評価品)の中から選ぶ傾向が強まっているため、本記事が参考になれば幸いです。
※本記事についてご不明な点がございましたら、takeda@frominfo.comまでご連絡ください。
Twitterもやっていますのでよかったら覗いてみてください。
>>他の方のこちらのサイトも参考になりそうです。
コメント
いつもツイッター楽しく読んでいます。
相談させて下さい。
一戸建てにもディスポーザーはつけられますか?
昨年千葉県浦安市に一戸建てを建てました。
住友林業の営業に一戸建てには、ディスポーザーは取り付けられない、ような感じで言われ諦めていました。
住み始めると、やはり、生ゴミ処理が大変です。
以前はマンションでディスポーザーを使用していて、重宝してました。
ご意見いただけますと嬉しいです。
コメント有難うございます。
現在の日本ではディスポーザーの単独使用が殆どの地域で条例で認められていません。
ディスポーザーを使用するにはディスポーザー排水処理システム(ディスポーザー+専用配管+処理槽)での使用となります。
戸建てに後付けで処理槽を埋設するのは現実的には不可能ですね。
最近では、ディスポーザーの単独使用を許可(推奨)する自治体も少しずつですが増えてきています。
ディスポーザーを単独使用しても問題ないということが少しずつ証明されていけば全国的に広がっていくかもしれませんね。
【memo】
生ゴミを可燃ゴミで処理した場合、水分を含んでいるので燃焼効率が悪いのでオイルがたくさん必要となります。また燃焼時にCo2も排出します。
ディスポーザーで砕いて下水処理施設で水処理した方が、多少水処理のコストが上がりますが、ゴミ収集の運搬コストが削減できCo2も削減できます。ユーザーとしても即座に生ゴミを処理できるのでゴキブリやハエも寄ってきません。ゴミ置き場のカラス被害もなくなります。ディスポーザー導入はメリットだらけですね。
私見ではございますが、1960年代にアメリカから輸入販売が開始された当時の日本は今みたいに下水道が普及していませんでした。合併浄化槽も義務付けられておらず、砕かれた生ごみ(キッチン排水)は河川に垂れ流しとなっていました。環境汚染が問題視されるようになり各自治体にディスポーザーの使用自粛が下り、各社撤退した経緯がございます。
下水道が普及しているアメリカでは当たり前のように単独使用で使われています。
一般家庭の約6割で普及しています。
1960年代の日本が現在のような下水道の普及率や合併浄化槽が義務付けられていたら、当たり前のように単独使用で問題なく普及していたかもしれませんね。
現在は下水道が普及しましたが、一度ダメになったものを良しとするには、根拠が必要となります。
繰り返しになりますが、ディスポーザーの単独使用が許可された自治体や社会実験等で、単独使用でも問題がないということが証明されていけば、いつかは日本でもアメリカのように普及すると思います。
以上、あくまで個人的な見解ですのでご参考程度にお願いします。
blperson 様
文章中での確認です。
条例改正とありますが、要綱の改正ではありませんか?
条例と要綱は、その性質は全くことなるものです。
条例という言葉を使って、製品認証品のみが交換できるように思わせるのは、ミスリードではありませんか?
また、(ディスポーザーの交換自由化)とありますが、そもそも、「届出」には、行政の審査はありませんので、交換自由化になったという表現もおかしくありませんか?
要綱改正前でも、ディスポーザーの機種が限定されていることはありませんでした。
機種が限定されるように行政を説得していたのは、このWEBサイトに掲載されているメーカー側だったと記憶しています。
「機種を交換されると放流水の水質を保証できない」という理由だったと思います。
ご指摘有難うございます。
伊師原様の仰る通り『条例改正』ではなく正しくは『要綱改正』ですね。
(公社)日本下水道協会の製品認証制度には個人的にもおかしな点があるとは思っております。
ディスポーザーと処理槽とのシステムとしての性能を見るのであれば、破砕粒子の基準ぐらいで良い気もしますね。
貴重なディズポーザーの情報発信ありがとうございます。
1つ相談です。
新築時にTOTO製が付いていたマンションを中古(築15年)で購入しました。前オーナーが故障したので取り外しており、せっかく処理層もあるマンションなので再装着したいと考えていた折に、管理会社斡旋で安永製に変更の推奨および販売案内が来ました。
工事費+水栓金具もセットで(水栓はリクシル1つとグローエ2つの計3タイプから選択で)コミコミで15万から17万円します。ネットで調べたら他社でもまったく同じ価格なので、特に安いわけでもないようですし、TOTO製の後継が安永限定ではないことも分かりました。
そこで、
ただ、何かあれば管理会社が窓口で対応してくれるので、この斡旋販売に乗るべきか?
高性能なフロム工業製を選ぶべきか?
そもそも水栓金具はセットで買う必要ないか?
以上のような悩みに突き当たりました。
よきアドバイスを頂けないでしょうか?
ヤマハ様
はじめまして。コメントありがとうございます。
ディスポーザー付マンションにお住まいでしたら処理槽の維持費も負担されていると思いますので、生ごみが出るご家庭でしたらディスポーザーをご使用するべきだと思いますよ(^^♪
管理会社斡旋とは安心感がありますね!
自動給水仕様の水栓割込給水タイプは、スイッチがONとなると水栓から強制的にお水を出す仕組みとなっております。強制的にお水を出すために、水栓に適合した「分岐アダプタ」という三方分岐の部品を水栓の直下に接続しております。分岐アダプタはディスポーザー用の部品という扱いになりますので、ディスポーザー交換の際は水栓とセットで交換した方が、結果としてお得になると思います。
フロム工業製の取付については、まずは管理会社様にご確認されたらどうでしょうか?斡旋している業者さんがフロム工業製を取り扱っている可能性もありますよ!
私見ではございますが、何かあったときにきちんと対応してくれる業者さんで交換しておけば大丈夫だと思います。
フロム工業製の取付をご検討で、どこにお願いすればわからない場合は下記アドレスにご連絡いただければしっかりと対応させていただきますよ^ ^
takeda@frominfo.com
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